店舗・商業空間デザイン展講演レポver.2 ブランドイメージを打ち出すカフェの空間づくり②

デザイン営業部の酒井です。

前回に引き続き、店舗・商業空間デザイン展講演レポver.2の後編 。

「ブランドイメージを打ち出すカフェの空間づくり」というテーマの行われました。

*前回の記事は下記リンクよりご覧下さい。


続いて加藤氏によるPuddleの紹介。

加藤氏は大学で建築を学び、建築事務所やインテリア事務所での仕事の経験の中で、お店がオープンする1秒前まで「なんとかしよう」と、頭をフル回転させ手探りで生み出していくコトを学んで事務所の立ち上げでした。

設計者ですが、だからこそお店の土地選び、テナント選びなど、施主の「この町でやりたい!」という思いがある中で町の歴史や性格の分析から関わり仕事をしていきます。パドルの事務所は渋谷の働く場所と住宅街の境にあるような立地で、1Fをガレージから事務所に改装、2Fと3Fは加藤邸にして、「渋谷で暮らす」ことを意図的に選んでライフスタイルとワークスタイル、どちらも伝えるような場を持っています。

カフェとの仕事が多いこともあり、ローマテリアルのエスプレッソマシーンを事務所において、日々の手入れをします。このエスプレッソマシーンが一種の神棚のような役割も持ち、どんなに忙しくても5分くらいかけてコーヒーを淹れる。それを社員の日課にしているそうです。


○設計事例

DANDELION CHOCOLATE


(写真引用:https://dandelionchocolate.jp/201702kamakura01/)

蔵前に1店舗目を作ったダンデライオンチョコレートの2店舗目をどこに作るかの相談を施主から受け、結果的にその場所は築90年の郵便局として使われていた洋館。場所は三重県伊勢の伊勢神宮下宮の前の物件になりました。「日本の文化を発信する場にしたい」という洋館の持ち主から加藤氏に話を持ちかけられた時、ダンデライオンのものづくりの姿勢や食の神豊受大神を祀る神社のお膝元ということなども踏まえ、いろいろあったけれど話し合い、日本のブランドではないものを日本人が発信するという場になりました。

実際の空間は和・洋関係なく、できるだけ何もしないデザイン。解体工事に立ち会い加藤氏自身の感覚で必要な場所を残し、三重の材と職人にダンデライオンのための”器”を作ってもらッたと言います。

次の店は、鎌倉駅のすぐそばに。

駅のすぐそばで私有地だけれど、私有地を通勤通学路として通る町の人があまりにも多く、加藤氏の言葉で言うと「私有地だけれど市民の道」でした。

その道を守ることを大事にしたデザインが行われました。

店員が町の人と顔をあわせるために解放した窓。前からも後ろからも人から見られることへ、クライアント側からの不安要素の声もありましたが、「それをストレスでなく、楽しみに!」と提案したと言います。

この鎌倉の物件、実はウェルカムの横川氏も検討したものの条件の厳しさから見送ったそう。こんないい店が建つと悔しい思いもあると話してくださいました。


BEFORE9

(画像引用:http://sakahachi.jp)

 京都の案件ですが、イメージする京都とは違う場所。

片側3車線の大通りに面する、周りはビルばかりの町家を造り酒屋の再生をテーマに設計。しかしこの町屋、もとは長屋だったと思われますが後ろは既に駐車場に!3件だけ残る、そんな”長屋じゃない長屋”が物件でした。

クラフトビールとクラフト酒を楽しむ店なので、素材感を大切に。

2Fのフロアの奥の壁は大きく抜いてポリカボネートをはり、元は長屋でそこで家は途切れていなかった、という繋がりと、裏の駐車場も店からの視線と明かりで少し治安を良くしよう。そんな、周りの町とのかかわりもデザインされています。



%ARABICA

(画像引用:https://arabica.coffee/location/arabica-kyoto-higashiyama/)

京都発、世界5カ国にも展開しこれからさらに世界へ発信していくアラビカは、ロケーションハンティングから一緒に同行するといいます。

今回の講演で紹介されたのはフランス一号店となるパリの室内通りの店!

店づくりで心掛けることは、はたらく人が一番気持ちのいい場所に居られること。そして、お客様とスタッフの目線を合わせること。

アラビカのドバイ出店では公開空地を活性化しようとその場所に出店。外と店内に段差を設けず、床がつらになるようにということを意識しています。

日本・世界に広がるアラビカの設計する時の共通点は、コーヒー一杯だけでなく豆や焙煎機など、農園からバリスタまでが伝わること。そして、動きがある、止まらないことを意識しているといいます。

つくり込みない、完成させないことが人を惹きつけるのかもしれません。

「加藤さんの空間は、背筋が伸びるような、たとえば丁寧に扱いたくなる、物を整えたくなるような心地よい緊張感のある空間。リスペクトできるバランスがあります。そして、店のオーナーもその心がけをするべきだと思っています。」横川氏も加藤氏の講演を聞いた上でそう語ります。


あっという間に講演時間が終わってしまい、一つだけ会場からの質疑応答が行われました。


Q.私は植物をデザインしています。

2人が植物を扱うなら、何をテーマにしますか?

A.

横川氏:

”光”をどう取り入れるか。植物には光と土と水が必要なので、それをどう取り入れるか

ですね。たとえば人が多少汚れてでも、土に触れたらいいなと思います。

加藤氏:

お花屋さんは店の奥に花のアレンジメントをする台があったりしますが、その台が店の中心!みたいな、一番植物に詳しい人と対話しやすい場がいいですね。日本の花はショーケースに入っていることが多いですが、たとえばオランダみたいな花が自然に近く、身近だとうれしいです。


○おわりに

講演が横川氏から加藤氏に切り替わる途中で、

塩田氏より「この3つのキーワードを念頭に置いて聞くといいですよ。」とアドバイスが。そのキーワードは下記の3つです。

・人が入って、初めて店になる。

・無垢・生の素材をいかに使うか。

・店づくりは町づくり。

横川氏の大事にしていると語った内容が、話し手を変えて加藤氏に代わっても、当たり前のように大事にしていることが伝わってきます。

『ブランドイメージを打ち出すカフェの空間づくり』にはそれぞれのブランドの色が不可欠ですが、店として・カフェとして・空間として大事なことがこの3つに込められているように感じました。

山翠舎でも、まさに無垢・生の素材、古木を大事にお店づくりを行っています。

また、GINZA SIXの栗原氏も未来の町を考えたときに人と人、店と店がつながる必要性を言及していましたが、町づくりにつながる店づくりには本物の素材や居心地の良さというものが、空間に必要な大前提の条件になるのかもしれません。

山翠舎のブログ

山翠舎の舞台裏ブログです。古木を使ったお店づくりのお話や、開店までのドキュメント、会社内のさまざまな動きなどを綴っています。

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