店舗・商業空間デザイン展講演レポver.3 空間デザインを通じた新しい価値観の創出

 こんにちは。

デザイン営業部の酒井です。

今回は店舗・商業空間デザイン展講演レポver.3 をおおくりします!


*ver.1,ver.2はこちら 

ver.1 GINZA SIX ~東京の新たな磁力~

vwr.2 ブランドイメージを打ち出すカフェの空間づくり

鬼木デザインスタジオ代表 鬼木孝一郎氏

鬼木デザインスタジオ代表の鬼木孝一郎氏は年生まれで早稲田大学大学院卒業後、株式会社日建設計勤務。

その後、有限会社nendo入社。10年間に渡りチーフディレクターとして国内外の空間デザインを手がけ、2015年、鬼木デザインスタジオ設立。

今回は公園の中でご紹介いただいた事例の中から抜粋してご紹介します。


鬼木デザインスタジオが世に知られるようになったきっかけとして、

エルメス祇園店が挙げられます。

エルメス祇園店

 エルメス祇園店は2016年11月3日から 2017年7月31日までの限定の展示。

この地域は景観保全地域であり制約も多く、老朽化していた古民家をほぼ新築のように建て替える必要がありましたが外から見たら変わらない、といった外観になるよう前の形に戻したと言います。

入り口を50センチ動かそうとするだけでも大仕事で大変!といった規約のしばり。そんな物件で周りへどう開くか?というのが設計にあたってのキーワードになりました。道路側には小さな看板とのれん程度鹿出せません。そこで、敷地内に路地を作り店舗と路地とその間をつなぐ庇を作り、人が集う場をデザインしました。

町屋で壁面を全面ガラス張りにするという試みは珍しく、エルメスの店先にのれんがある!というのもここならでは。庭には市松模様のタイルを敷き詰めて、苔やオリーブ、ブルーベリーや多肉植物など純和風ではない一工夫を加えて一歩革新的な感覚を得られる場です。

ガラスの存在感を感じさせないフラットさで、ガラスに激突するお客様も多数いらっしゃったとか。

(写真引用先リンク:http://www.maisonhermes.jp/feature/349857/


インテリアには木組みと日本古来からの手法を使って重機を作成しています。

今回は安全を考慮して一部のみ釘を使っていますが、木組みはもともと接着剤やクギエオ使わずパーツを差し込んでいくことで自立する手法。短い期間の展示ということもあり、スカーフの期間、バックの期間、サマーウェアの期間…など、9ヶ月という限られた期間でテーマごとに内装の入れ替えが行われるため、いろんなものに対応できるようにということも重視されたデザインです。外にある木組みの重機はそのままに、中心の重機をテーマに合わせて変更。「空でも美しいデザインにしたい!_そんなことも心がけられています。

2Fにはギャラリースペースがあり、天井を梁だけ残してスケルトンにし、白い天井をあえて照らすことで外にいるような開放感を演出しています。

このエルメス祇園店が、伝統と革新を伝える舞台空間に。

そんな意識が実現した空間と時間になったことでしょう。

(写真引用先リンク:http://www.maisonhermes.jp/feature/349857/

ARTGLORIEUX

GINZASIXのなかにある販売も行うギャラリー。

外側から見るとモルタル仕上げの壁に、小さな小窓。クライアントからはいろんなジャンルを展示するからこそホワイトキューブのような空間の要望があると同時に、ブランド性も表現したいという相反する要素を持ち合わせた願いがありました。ギャラリー内の壁を斜めに作ることでパースをつけると同時に、奥が見えないのでもっと中に入りたくなる。明るいところや狭い場所に行ってみたくなるという心理を刺激した自然な回遊性を演出し、一目で見てわかった気になりすぐギャラリーから出てしまうという心理を起こさないような工夫が施されています。

窓を絵のフレームのように配置することで、外と中のつながりの仕掛けを行っています。

(写真引用リンク先:https://www.facebook.com/artglorieux/



STUDIOUS NAMBA

大阪の難波パークス内にある路面店のような立地の店舗。

メンズとレディースをくっきりと中心で分けたい!というのがクライアントの希望。

中心にたったスチールにファブリックを編み込むことで構成されたパーテーションのような感覚にもなる仕切りは、ファブリックにエイジング塗装をして仕上げています。

布の隙間から反対側も見えるし、一体感があります。

大胆に布を使った理由として一つはコスト面。そしてもう一つは、軽やかで遊び心のあるブランドであることをインテリアでも表現したかったからだと言います。

(画像引用リンク先:http://www.studious-onlinestore.com/news/201707/2642



DEAR MAYUKO

蚕のまゆの成分を使った基礎化粧水などの美容関連商品を取り扱うDEAR MAYUKO。

このブランドの空間をデザインするにあたって、最初のブランドづくりの段階から関わったといいます。その時の課題は、通常店舗設計をするときは物件が決まっていることも多いですが、場が決まっていない段階でのクライアントへの提案は、何を手掛かりにルール決めをするかということが課題。

素材などを決めるとそこで制約が生まれてしまうなど試行錯誤を重ねる中、「DEAR MAYUKOの商品はお風呂場で使われるもの」という共通点からタイルのグリットを貼ることをルール決めにしたそうです。タイルが飛び出てディスプレイ台にしたり、名古屋に店では壁に配管パイプのディスプレイをして、お風呂場というテーマから連想される遊び心あるパーツも組み込まれていきます。


(写真引用リンク先:http://oniki-design-studio.com/portfolio/110/

DEAR MAYUKO ジェーアール名古屋タカシマヤ店)

デザインで大切にしていること

自分の中にものが、形となってアウトプットされる。そのときは、ストーリー性を重視したいと鬼木氏は語ります。

例えば食事をするときにその食べ物の器の背景を知ると、食べているものがより美味しく感じる。インテリアもそれに近い感覚があり、空間に込めたメッセージを受け取ると愛着が湧いたりもするので、だからこそメッセージを込める。

鬼木氏のデザインを「シンプル」と評価する人が多いですが、自らもストーリーが伝わるようにとその他の要素をマスキング、取り払うようにしていく構成のデザインをしているそうです。

デザイの構成は連立方程式を解くような気分であり、頭に入ってくる情報・並ぶ計算式には矛盾が多い。だからこそどう解くか?それは、デザイナーである自分が一つ追加する条件・計算式があることでスムーズに解ける。何かの操作で矛盾が解けることがデザインであるとのこと。


これからの店舗デザイン

今はウェブで買い物をする時代。これからもっとその流れが加速することが多いに想定される中、特に物販の実店舗は何をする場になるのか?それに大きな関心を持っていて、楽しみであると鬼木氏は語ります。

その場所に行くことで感動を与えたえり出会いの場になったり、期間限定のエンターテイメント型や、店員さんとお客さん、お客さんの交流を楽しむコミュニケーション型。ショールームのような機能な機能を持ち実際に買うのはウェブで!という連動型。

いずれにおいても実店舗という場がなくなってはならないからこそ、今後の変化が楽しみであり、その変化に関わっていきたい。

そんなお話しで講演会は締めくくられました。



おわりに

ストーリーを重視するという点において、山翠舎でも「ストーリー」を大事に空間に使う材やデザイン、オーナーさんの思いをお客様に肌で感じてもらえるようなことを大切にしています。それが伝わることが居心地の良さや小さな感動に繋がる。

鬼木氏の話しを聞いていると、考え抜かれた上でそれがシンプルな表現に落とし込まれるということで受取手にストーリーがわかりやすくバトンパスされるということが実例の数々から伝わってくる貴重なお話しでした。

ものを買う場だけではない、ストーリーを伝える場。その要素なくしてはますます成り立たなくなる店舗設計において、「お店とはどんな場か?」ということをますます追求する必要性とともに、来客者の「どんな場であってほしいか」を自分がいち顧客だったら、という視点をいろんな人の声として聞き、「これからの店舗デザイン」という連立方程式を解いていきたいです。

山翠舎のブログ

山翠舎の舞台裏ブログです。古木を使ったお店づくりのお話や、開店までのドキュメント、会社内のさまざまな動きなどを綴っています。

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